映画を読む

ドイツ某都市にて勉強中です。「映画を読む」と題して、観た映画の感想や印象等を淡々と書いていこうと思っています。ネタバレに関しては最低限の配慮はしたいですが、踏み込んだ内容も書くと思うので、気にする方はご注意を。

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

笑いとともに、プロパガンダの強張りに入るひび(エルンスト・ルビッチ「ニノチカ」/Ernst Lubitsch "Ninotchka" 1939年)

エルンスト・ルビッチ「ニノチカ」(Ernst Lubitsch "Ninotchka" US 1939)を鑑賞。 おおまかな感想、印象 ルビッチらしい、テンポのよい洗練されたラブコメディ。グレタ・ガルボ演じる厳格な共産党員ニノチカが、パリの伯爵レオンとの出会いを通じて変化して…

1910年代のサイレント映画に見る、性別の「らしさ」の揺らぎ

先日、近所の映画館で、クロスドレッシングをモチーフにした1910年代の無声映画を三作品まとめて観ることができた(有難いことにピアノによる生伴奏つき)。以下、それについて書きつつ、性別ごとの「らしさ」という固定観念の揺らぎについて考えてみたい。 …

社会の枠のなかでラディカルに自由であろうとすること(アンドレス・ファイエル「ヨーゼフ・ボイスは挑発する」/Andres Veiel "Beuys" 2017年)

アンドレス・ファイエル「ヨーゼフ・ボイスは挑発する〔原題:ボイス〕」(Andres Veiel "Beuys" DE 2017)を鑑賞。5月ごろからヨーゼフ・ボイスに関するドキュメンタリー映画が公開されていることは知っており気になっていたのだが、近所の映画館で監督のト…

ほんの束の間だけ、絵画のなかできらめくように(ボー・ウィデルベルイ「みじかくも美しく燃え」/Bo Widerberg "Elvira Madigan" 1967年)

ボー・ウィデルベルイ「みじかくも美しく燃え」(Bo Widerberg "Elvira Madigan" SE 1967)を鑑賞。少し前に近所の映画館でウィデルベルイの懐古特集が組まれており、その枠のなかで観ることができた。 おおまかな感想、印象 絵画のなかのような美しき生活を…

破滅のただなかで追想される過去の輝き、そこに向けられる哀悼のまなざし(ジョセフ・フォン・スタンバーグ「嘆きの天使」/Josef von Sternberg "Der blaue Engel" 1930年)

ジョセフ・フォン・スタンバーグ「嘆きの天使」(Josef von Sternberg "Der blaue Engel" DE 1930)を鑑賞。 おおまかな感想、印象 以前記事を書いた「最後の命令」(1928年)以来のスタンバーグ映画。「最後の命令」がアメリカ製作の無声映画だったのに対し…