映画を読む

ドイツ某都市にて勉強中です。「映画を読む」と題して、観た映画の感想や印象等を淡々と書いていこうと思っています。ネタバレに関しては最低限の配慮はしたいですが、踏み込んだ内容も書くと思うので、気にする方はご注意を。

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

どろどろしてぬるぬるしたもの、或いはシュールレアリスムの夢(デヴィッド・リンチ「イレイザーヘッド」/David Rynch "Eraserhead" 1977年)

デヴィッド・リンチ「イレイザーヘッド」(David Rynch "Eraserhead" US 1977)を鑑賞。少し前(10日ほど前?)に観たのだが、忘れないうちに感想を書いておく。 デヴィッド・リンチの監督デビュー作。上映プログラムの説明文でも、また上映前の前説のような…

スクリーンの上の、あまりにもあからさまで、あまりにも直接的な現実(ジャンフランコ・ロージ「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」/Gianfranco Rosi "Fuocoammare" 2015年)

ジャンフランコ・ロージ「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」(Gianfranco Rosi "Fuocoammare" IT/FR 2015)を鑑賞。海を渡る難民の姿を追ったドキュメンタリーで、ベルリン国際映画祭で金熊賞をとった作品ということで、気になっていた。 舞台は…

参加した覚えのないゲームのルールが人生を決してしまうということ(ケン・ローチ「わたしは、ダニエル・ブレイク」/Ken Loach "I, Daniel Blake" 2016年)

ケン・ローチ「わたしは、ダニエル・ブレイク」(Ken Loach "I, Daniel Blake" GB/FR/BE 2016)を鑑賞。 静かで淡々としていて、それでも目を離せない映画だった。一言でいうと、ある初老の男性が社会保障を得るために行政手続きと格闘するという話。ある意…

置き換えられ、繰り返されるモチーフが織りなす喜劇(エルンスト・ルビッチ「極楽特急」/Ernst Lubitsch "Trouble in Paradise“ 1932年)

エルンスト・ルビッチ「極楽特急」(Ernst Lubitsch "Trouble in Paradise" US 1932)を鑑賞。 ドイツ出身のルビッチは、1935年にはナチスによってドイツの市民権を剥奪されてしまうのだが、1920年代には既にアメリカ、ハリウッドでの活動を始めている。そし…

息ができないほどの非人間性のなかでなおも人間らしさと呼びうるものが存在することができるのか(ネメシュ・ラースロー「サウルの息子」/László Nemes "Saul Fia" 2015年)

久しぶり(といっても10日ぐらいぶり)の映画館。ネメシュ・ラースロー「サウルの息子」(László Nemes "Saul Fia" HU 2015)を鑑賞。 これでもか、というほどに息苦しい映画だった。舞台はナチスドイツによって運営されるアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制…

近代化された世界における野生、或いはその滑稽さ(ニコレッテ・クレビッツ「ワイルド、わたしの中の獣」/Nicolette Krebitz "Wild" 2016年)

ニコレッテ・クレビッツ「ワイルド、わたしの中の獣」(Nicolette Krebitz "Wild" DE 2016)は、昨年11月中旬に鑑賞。 地味目で上司にバカにされているOLのお姉ちゃんが、ある日自宅の近くで見かけたオオカミに心を奪われ、捕まえ、心を通わせ、同時に自分の…

いつ崩れ落ちるともしれないアイデンティティ(フィオナ・タン「歴史の未来」/Fiona Tan "History’s Future" 2015年)

ここのところ映画館に行けていないので、昨年観た映画と、それと関係する展覧会について。 フィオナ・タン「歴史の未来」(Fiona Tan "History’s Future" EN/DE/FR/NL 2016)は、昨年9月末に鑑賞。フィオナ・タンは日本でも何度か個展を開いたことがある芸術…

残された者のエゴイズム、傷と嘘を携えて生きること(フランソワ・オゾン「婚約者の友人/フランツ」/François Ozon "Frantz" 2016年)

※2017年10月11日~14日、本記事を加筆修正しました。 フランソワ・オゾン「婚約者の友人/フランツ」(François Ozon "Frantz" DE/FR 2016)を鑑賞。 おおまかな感想、印象 独仏合作の映画。事前に読んだプログラムに「喪失と、悲しみと、愛が辿る不思議な道を…

歴史の流れの残酷さ、資本主義と文化産業の暴力性(ジョセフ・フォン・スタンバーグ「最後の命令」/Josef von Sternberg "The Last Command" 1928年)

ジョセフ・フォン・スタンバーグ「最後の命令」(Josef von Sternberg "The Last Command" US 1928)を鑑賞。意図せず、無声映画を連夜観ることに。そしてこの時代の映画のもつ力を改めて思い知ることに。 ほとんど予備知識なしで行ったが、これぞ名画、と思い…

架空の絵空事ではなく、現実の映し絵としての、SF映画(フリッツ・ラング「メトロポリス」/Fritz Lang "Metropolis" 1927年)

新年早々、フリッツ・ラング「メトロポリス」(Fritz Lang "Metropolis" DE 1927)を鑑賞。 ドイツ映画史上の古典でありかつSF映画の先駆、というくらいのことは知っていたが、その評判に違わないというか、それ以上のインパクトのある映画だった。 端的に言…

このブログについて

はじめまして。 ドイツ某都市に留学している者です。 去年からこちらで映画を観ることが多くなり、個人的にちょこちょこと感想など書いていたのですが、どうせならブログという形で公開するのも悪くないかもしれないと思い当たりました。 そういうわけで、20…