先日「夢のなかにいた者たち」についての記事でも書いたが、今月は近所でオーストリア人監督ルート・ベッカーマンの特集が催されおり、彼女のドキュメンタリー映画を幾つか観ることができた。そのなかでも一番印象に残ったドキュメンタリーは、ドイツ国防軍…
記事が増えてきたので、これまで記事を書いた映画の一覧を作ります。 年代順に並べます。 映画の日本語タイトルに関しては、既に日本で公開されているものにはその邦題を、日本で未公開のものには原題を極力そのまま訳したタイトルをつけています。 リンクを…
露悪的なものを一つの映像世界へ昇華する「エロ・グロ」映画 昨日の記事で、映画について文章を書く際の自分の方針のようなものを書いた。そこに書いた通り、私は、映画を何かしらの現実を写し出すものとして読み、そこから読み取れたことや考えたことを文章…
このブログを始めて三か月が過ぎて、記事もいくつか書いてみて、なんとなく自分なりの原則というか指針のようなものができてきたような気がする。ブログのタイトルも登録時の「Filmreview」から少し前に「映画を読む」に変えたのだが、これは私が今後も映画…
ルート・ベッカーマン「夢のなかにいた者たち」(Ruth Beckermann "Die Geträumten" AT 2016)を鑑賞。本作は、オーストリアの映画祭Diagonale 2016にて最優秀映画賞を獲得している。 ベッカーマンは、ユダヤ系オーストリア人という自らのルーツを主題にした…
ある意味では時代にのって、そしてある意味では時代に逆行して、メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック「キング・コング」(Merian C. Cooper, Ernest B. Schoedsack "King Kong" US 1933)を鑑賞。ちなみに最新版の「キング・コング」は…
ルネ・クレマン「鉄路の闘い」(René Clément "La Bataille du rail" FR 1946)を鑑賞。「ヨーロッパ映画におけるレジスタンス」(Widerstand im europäischen Film)なる上映イベントの一環とのこと。それもあって映画前に専門家によるミニ講演もあった。 お…
ミア・ハンセン=ラヴ「未来よ こんにちは」(Mia Hansen-Løve "L’Avenir" FR/DE 2016)を鑑賞。独仏合作で、観る直前に知ったのだけれど、昨年2016年のベルリン映画祭で銀熊賞を獲得した映画だとのこと。 おおまかな感想、印象 知識と教養のなかに生きる初老…
ハンス・ベーレント「ダントン」(Hans Behrendt "Danton" DE 1931)を鑑賞。観たのは少し前なのだが、忘れないうちに。 おおまかな感想、印象 ドイツ制作で、有声映画としては早い時期のもの。フランス革命勃発後、革命の主要な担い手であったジョルジュ・…
フリッツ・ラング「死滅の谷」(Fritz Lang "Der müde Tod" DE 1921)を鑑賞。チケットを買おうと並んでいたら、一人のおばさまが余ったらしいチケットを譲ってくれた。どうせ学割で安く買えるのにもらってよいのだろうかと思いつつも、あまり時間もなかった…
クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」(Clint Eastwood "American Sniper" USA 2014)を鑑賞。大学関連の上映会だったようで、学生証提示で無料で観られた。そのことを行くまで知らなかったのだが、支払いしようとしたときに受付のお姉さんが…
ラウル・ペック「マルクス・エンゲルス〔青年時代のカール・マルクス〕」(Raoul Peck "Le jeune Karl Marx / Der junge Karl Marx" BE/DE/FR 2017)を鑑賞。こちらでも3月初めに封切られたばかりだが既にそこそこ話題になっているようで、気になっており早…
アラン・J・パクラ「ソフィーの選択」(Alan J. Pakula "Sophie’s Choice" USA 1982)を鑑賞。 おおまかな感想、印象 浮世離れした若者たちが送る、まるでの詩のなかのように色鮮やかなニューヨーク、ブルックリンの生活。その幸福な生活のなかに、時折顔を…
ゲルト・オスヴァルト「雨が降ったその日に」(Gerd Oswald "Am Tag, als der Regen kam" BRD 1959)を鑑賞。未だ戦火の跡が残る西ベルリンを舞台に、ギャング団を組織する若者たちが織りなす群像劇。 簡単なあらすじ 青年ヴェルナーによって率いられるギャ…
マーレン・アデ「ありがとう、トニ・エルドマン」(Maren Ade "Toni Erdmann" DE/AT/CH 2016)を鑑賞。国内外で色々な賞をとったり米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたりで、ドイツではそれなりに話題になっており気になっていたが、ようやく観ら…
近所で"Africa Alive 2017"という映画祭が催されており、そこで「サラバ 不法に生きるということ」(Peter Heller / Saliou Waa Guendoum Sarr "Life Saaraba Illegal" DE 2016)を鑑賞。ドイツ人監督Peter Heller とミュージシャンでもあるセネガル人助監督…
デヴィッド・リンチ「イレイザーヘッド」(David Rynch "Eraserhead" US 1977)を鑑賞。少し前(10日ほど前?)に観たのだが、忘れないうちに感想を書いておく。 デヴィッド・リンチの監督デビュー作。上映プログラムの説明文でも、また上映前の前説のような…
ジャンフランコ・ロージ「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」(Gianfranco Rosi "Fuocoammare" IT/FR 2015)を鑑賞。海を渡る難民の姿を追ったドキュメンタリーで、ベルリン国際映画祭で金熊賞をとった作品ということで、気になっていた。 舞台は…
ケン・ローチ「わたしは、ダニエル・ブレイク」(Ken Loach "I, Daniel Blake" GB/FR/BE 2016)を鑑賞。 静かで淡々としていて、それでも目を離せない映画だった。一言でいうと、ある初老の男性が社会保障を得るために行政手続きと格闘するという話。ある意…
エルンスト・ルビッチ「極楽特急」(Ernst Lubitsch "Trouble in Paradise" US 1932)を鑑賞。 ドイツ出身のルビッチは、1935年にはナチスによってドイツの市民権を剥奪されてしまうのだが、1920年代には既にアメリカ、ハリウッドでの活動を始めている。そし…
久しぶり(といっても10日ぐらいぶり)の映画館。ネメシュ・ラースロー「サウルの息子」(László Nemes "Saul Fia" HU 2015)を鑑賞。 これでもか、というほどに息苦しい映画だった。舞台はナチスドイツによって運営されるアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制…
ニコレッテ・クレビッツ「ワイルド、わたしの中の獣」(Nicolette Krebitz "Wild" DE 2016)は、昨年11月中旬に鑑賞。 地味目で上司にバカにされているOLのお姉ちゃんが、ある日自宅の近くで見かけたオオカミに心を奪われ、捕まえ、心を通わせ、同時に自分の…
ここのところ映画館に行けていないので、昨年観た映画と、それと関係する展覧会について。 フィオナ・タン「歴史の未来」(Fiona Tan "History’s Future" EN/DE/FR/NL 2016)は、昨年9月末に鑑賞。フィオナ・タンは日本でも何度か個展を開いたことがある芸術…
※2017年10月11日~14日、本記事を加筆修正しました。 フランソワ・オゾン「婚約者の友人/フランツ」(François Ozon "Frantz" DE/FR 2016)を鑑賞。 おおまかな感想、印象 独仏合作の映画。事前に読んだプログラムに「喪失と、悲しみと、愛が辿る不思議な道を…
ジョセフ・フォン・スタンバーグ「最後の命令」(Josef von Sternberg "The Last Command" US 1928)を鑑賞。意図せず、無声映画を連夜観ることに。そしてこの時代の映画のもつ力を改めて思い知ることに。 ほとんど予備知識なしで行ったが、これぞ名画、と思い…
新年早々、フリッツ・ラング「メトロポリス」(Fritz Lang "Metropolis" DE 1927)を鑑賞。 ドイツ映画史上の古典でありかつSF映画の先駆、というくらいのことは知っていたが、その評判に違わないというか、それ以上のインパクトのある映画だった。 端的に言…
はじめまして。 ドイツ某都市に留学している者です。 去年からこちらで映画を観ることが多くなり、個人的にちょこちょこと感想など書いていたのですが、どうせならブログという形で公開するのも悪くないかもしれないと思い当たりました。 そういうわけで、20…