読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画を読む

ドイツ某都市に留学中です。「映画を読む」と題して、観た映画の感想や印象等を書いています。ネタバレに関しては最低限の配慮はしたいですが、踏み込んだ内容も書くと思うので、気にする方はご注意を。

疲れ果てた死神と、この世を離れる門のイメージ(フリッツ・ラング「死滅の谷」/Fritz Lang "Der müde Tod" 1921年)

フリッツ・ラング「死滅の谷」(Fritz Lang "Der müde Tod" DE 1921)を鑑賞。チケットを買おうと並んでいたら、一人のおばさまが余ったらしいチケットを譲ってくれた。どうせ学割で安く買えるのにもらってよいのだろうかと思いつつも、あまり時間もなかった…

演出された英雄譚、正義の英雄が戦った敵とは誰だったのか(クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」/Clint Eastwood "American Sniper" 2014年)

クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」(Clint Eastwood "American Sniper" USA 2014)を鑑賞。大学関連の上映会だったようで、学生証提示で無料で観られた。そのことを行くまで知らなかったのだが、支払いしようとしたときに受付のお姉さんが…

哲学者たちが世界を変えようと思うとき(ラウル・ペック「青年時代のカール・マルクス」/Raoul Peck "Le jeune Karl Marx / Der junge Karl Marx" 2017年)

ラウル・ペック「青年時代のカール・マルクス」(Raoul Peck "Le jeune Karl Marx / Der junge Karl Marx" BE/DE/FR 2017)を鑑賞。こちらでも3月初めに封切られたばかりだが既にそこそこ話題になっているようで、気になっており早速観に行ってみた。 題名が…

罪のうえの詩情、或いは、アウシュヴィッツの後に幸福であることは許されるのか、という問い(アラン・J・パクラ「ソフィーの選択」/Alan J. Pakula "Sophie’s Choice" 1982年)

アラン・J・パクラ「ソフィーの選択」(Alan J. Pakula "Sophie’s Choice" USA 1982)を鑑賞。 浮世離れした若者たちが送る、まるでの詩のなかのように色鮮やかなニューヨーク、ブルックリンの生活。その幸福な生活のなかに、時折顔を覗かせるアウシュヴィ…

西ベルリンの若者たちが織りなす、淡い刹那の群像劇(ゲルト・オスヴァルト「雨が降ったその日に」/Gerd Oswald "Am Tag, als der Regen kam" 1959年)

ゲルト・オスヴァルト「雨が降ったその日に」(Gerd Oswald "Am Tag, als der Regen kam" BRD 1959)を鑑賞。未だ戦火の跡が残る西ベルリンを舞台に、ギャング団を組織する若者たちが織りなす群像劇。 簡単なあらすじ。青年ヴェルナーによって率いられるギャ…

化けの皮をかぶって、上っ面をひっぺがす(マーレン・アデ「ありがとう、トニ・エルドマン」/Maren Ade "Toni Erdmann" 2016年)

マーレン・アデ「ありがとう、トニ・エルドマン」(Maren Ade "Toni Erdmann" DE/AT/CH 2016)を鑑賞。国内外で色々な賞をとったり米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたりで、ドイツではそれなりに話題になっており気になっていたが、ようやく観ら…

希望と現実、それでも僕らはもう君たちのなかにいる(「サラバ、不法に生きるということ」/Peter Heller, Saliou Waa Guendoum Sarr "Life Saaraba Illegal" 2016年)

近所で"Africa Alive 2017"という映画祭が催されており、そこで「サラバ 不法に生きるということ」(Peter Heller / Saliou Waa Guendoum Sarr "Life Saaraba Illegal" DE 2016)を鑑賞。ドイツ人監督Peter Heller とミュージシャンでもあるセネガル人助監督…

どろどろしてぬるぬるしたもの、或いはシュールレアリスムの夢(デヴィッド・リンチ「イレイザーヘッド」/David Rynch "Eraserhead" 1977年)

デヴィッド・リンチ「イレイザーヘッド」(David Rynch "Eraserhead" US 1977)を鑑賞。少し前(10日ほど前?)に観たのだが、忘れないうちに感想を書いておく。 デヴィッド・リンチの監督デビュー作。上映プログラムの説明文でも、また上映前の前説のような…

スクリーンの上の、あまりにもあからさまで、あまりにも直接的な現実(ジャンフランコ・ロージ「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」/Gianfranco Rosi "Fuocoammare" 2015年)

ジャンフランコ・ロージ「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」(Gianfranco Rosi "Fuocoammare" IT/FR 2015)を鑑賞。海を渡る難民の姿を追ったドキュメンタリーで、ベルリン国際映画祭で金熊賞をとった作品ということで、気になっていた。 舞台は…

参加した覚えのないゲームのルールが人生を決してしまうということ(ケン・ローチ「わたしは、ダニエル・ブレイク」/Ken Loach "I, Daniel Blake" 2016年)

ケン・ローチ「わたしは、ダニエル・ブレイク」(Ken Loach "I, Daniel Blake" GB/FR/BE 2016)を鑑賞。 静かで淡々としていて、それでも目を離せない映画だった。一言でいうと、ある初老の男性が社会保障を得るために行政手続きと格闘するという話。ある意…

置き換えられ、繰り返されるモチーフが織りなす喜劇(エルンスト・ルビッチ「極楽特急」/Ernst Lubitsch "Trouble in Paradise“ 1932年)

エルンスト・ルビッチ「極楽特急」(Ernst Lubitsch "Trouble in Paradise" US 1932)を鑑賞。 ドイツ出身のルビッチは、1935年にはナチスによってドイツの市民権を剥奪されてしまうのだが、1920年代には既にアメリカ、ハリウッドでの活動を始めている。そし…

息ができないほどの非人間性のなかでなおも人間らしさと呼びうるものが存在することができるのか(ネメシュ・ラースロー「サウルの息子」/László Nemes "Saul Fia" 2015年)

久しぶり(といっても10日ぐらいぶり)の映画館。ネメシュ・ラースロー「サウルの息子」(László Nemes "Saul Fia" HU 2015)を鑑賞。 これでもか、というほどに息苦しい映画だった。舞台はナチスドイツによって運営されるアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制…

近代化された世界における野生、或いはその滑稽さ(ニコレッテ・クレビッツ「ワイルド、わたしの中の獣」/Nicolette Krebitz "Wild" 2016年)

ニコレッテ・クレビッツ「ワイルド、わたしの中の獣」(Nicolette Krebitz "Wild" DE 2016)は、昨年11月中旬に鑑賞。 地味目で上司にバカにされているOLのお姉ちゃんが、ある日自宅の近くで見かけたオオカミに心を奪われ、捕まえ、心を通わせ、同時に自分の…

いつ崩れ落ちるともしれないアイデンティティ(フィオナ・タン「歴史の未来」/Fiona Tan "History’s Future" 2015年)

ここのところ映画館に行けていないので、昨年観た映画と、それと関係する展覧会について。 フィオナ・タン「歴史の未来」(Fiona Tan "History’s Future" EN/DE/FR/NL 2016)は、昨年9月末に鑑賞。フィオナ・タンは日本でも何度か個展を開いたことがある芸術…

残された者のエゴイズム、傷と嘘を携えて生きること(フランソワ・オゾン「フランツ」/François Ozon "Frantz" 2016年)

フランソワ・オゾン「フランツ」(François Ozon "Frantz" DE/FR 2016)を鑑賞。 独仏合作の映画。事前に読んだプログラムに「喪失と、悲しみと、愛が辿る不思議な道をめぐる時代を超えた反戦映画」と書いてあったこともあり、観る前は(もっと言うと観始めて…

歴史の流れの残酷さ、資本主義と文化産業の暴力性(ジョセフ・フォン・スタンバーグ「最後の命令」/Josef von Sternberg "The Last Command" 1928年)

ジョセフ・フォン・スタンバーグ「最後の命令」(Josef von Sternberg "The Last Command" US 1928)を鑑賞。意図せず、無声映画を連夜観ることに。そしてこの時代の映画のもつ力を改めて思い知ることに。 ほとんど予備知識なしで行ったが、これぞ名画、と思い…

架空の絵空事ではなく、現実の映し絵としての、SF映画(フリッツ・ラング「メトロポリス」/Fritz Lang "Metropolis" 1927年)

新年早々、フリッツ・ラング「メトロポリス」(Fritz Lang "Metropolis" DE 1927)を鑑賞。 ドイツ映画史上の古典でありかつSF映画の先駆、というくらいのことは知っていたが、その評判に違わないというか、それ以上のインパクトのある映画だった。 端的に言…

このブログについて

はじめまして。 ドイツ某都市に留学している者です。 去年からこちらで映画を観ることが多くなり、個人的にちょこちょこと感想など書いていたのですが、どうせならブログという形で公開するのも悪くないかもしれないと思い当たりました。 そういうわけで、20…